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学科 産業関係学科
年度 2020
ゼミ名 寺井 基博
タイトル 接客サービス労働におけるマニュアル労働の日本的働き方
内容  本論文では、人的資源管理論、接客サービス労働の歴史を整理した上で、ユニクロで行われているマニュアル労働や自律性が発揮できていないような労働環境、制度を考察した。第1~2章までは労務管理論から人的資源管理論への転換を歴史的背景から考察し、人的資源管理論の概要を記述した。第3章では、接客サービス労働におけるマネジメント手法を先行研究をもとに整理し、接客サービス労働ならではの問題を記述した。第4章では、全国、グローバル展開している接客サービス業に注目し、サービスの標準化を迫られ、マニュアル労働を行っているユニクロを事例に考察した。同時にそのような環境での自律性の発揮のされ方を考察した。マニュアル労働は、人的資源管理論の観点から従業員を競争優位の源泉として捉えるのであれば、労働者がエンパワメントされた状態になっておらず、労働力を最大限活用できていないと感じた。しかし、サービスを標準化するためにはマニュアルは必要であり、その比重をいかに調整するかが重要であると考える。自律性に関しては、裁量が与えられていないという観点から自律性が発揮されていないという観点も重要であるが、しかし、それは日本特有のマネジメント手法に基づくものであり、一概に批判はできないものであると考えた。
講評  卒業論文の作成は、先行文献を集めて読み込み、時にはインタビュー等の調査を行い、それらの知見をもとに自らの考えを文章にまとめるという地味で忍耐を要する作業なので、 各人が関心をもって取り組むことができるようにテーマは自由とした。ただし、各自が選んだテーマと産業関係学との関係を論文の中で明らかにすることを条件としている。
 今回提出された卒業論文のテーマは、組織や日本的雇用慣行など「労使関係」に関するもの、長時間労働、テレワーク、女性活躍など「働き方改革」に関するもの、プロスポーツ選手や各種講師などの「労働者性」に関するもの、貧困や雇用機会創出など「社会問題」に関するものに分かれている。文献研究が主であるが、聞き取り調査に基づいて考察を行ったものも複数みられた。
 いずれの論文も先行文献を丹念に読み込んで、主要な議論を整理したうえで各自の見解が述べられていた。文章表現も的確であり、全般的に論文としての完成度は高い。提出者全員が卒業論文作成に懸命に取り組んだ努力は大いに賞賛に値する。この卒業論文は紛れもなく各人の「大学生活の到達点」であり、これを起点として社会人としての一歩を踏み出し、さらなる研鑽を積んでもらいたい。
 総合評価についてはいずれも甲乙つけ難いものであったが、最優秀論文は、「子どもの貧困における発生と連鎖のメカニズム-就労と教育による分析」とした。
 評価を分けたポイントは分析力と構成力であった。一般に、論文作成に費やした時間に比例して論点把握や考察が深まる傾向がみられるが、本論文では、それに加えて、これまでに培われた分析力と構成力、文章表現力が多いに発揮されている。ことばの定義、文献考察の深さ、統計データによる論証、論理の展開、そして明快な文章表現は秀逸で、総合力として他を抜きん出ていた。
キーワード1 人的資源管理
キーワード2 接客サービス労働
キーワード3 感情労働
キーワード4 マニュアル労働
キーワード5  
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