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学科 | 産業関係学科 |
年度 | 2020 |
ゼミ名 | 上田 眞士 |
タイトル | 日本企業における年次有給休暇―国際比較から考察― |
内容 | 本論文では、働き方改革によって労働基準法が改正され、年5日の時季指定が義務付けられた年次有給休暇の現状、問題点や改善策を欧米諸国と比較しながら、論じている。 今日では、多様な働き方、生活スタイルが存在し、「働きすぎ」(長時間労働)が問題視されている。その中で長時間労働の是正や労働者の健康確保などを図るうえで、年次有給休暇は非常に重要な役割を担っているが、研究の結果、その取得率が50%程度であることが分かった。 欧米諸国がほとんど100%であるのに対し、日本の取得率がこのように低い理由として、①従来の雇用システム、②正社員の働き方、③連続取得より、細切れでの取得が一般的であること、④病気休暇がないことが考えられる。 そのため、(ア)年次有給休暇付与義務日数を増加する、(イ)目標面談を行う、(ウ)、チームで働く、(エ)連続取得を促す、(オ)病気休暇を創設することで取得率向上を図るべきである。 また、その際には欧米諸国を単に模倣するのではなく、日本独自の価値観などを考慮したものでなくてはならない。 |
講評 | 皆さんの卒論テーマを大きく括って整理してみると,「アニメ産業の人材不足問題」「中小企業の事業継承と地域再生」「採用手法の変化と新規大卒労働市場」「コロナ禍とテレワーク,日本の労働生産性の今後」「SNSの存在意義」「働き方改革と働きやすい社会および年次有給休暇制度」「少子化社会でのビジネスおよび少子化対策と育児休業制度」「外国人技能実習制度の孕む問題」「労働組合の復興可能性」等々となっています。大雑把に言えば,これら一連の主題が表象しているものは,一方でのグローバル規模での市場主義の加速と急速な技術革新の展開,また他方での国内における種々の労働問題,社会問題の発生という,現代の雇用社会を舞台に展開している構造変化,それを舞台とした現実社会での当事者たちの苦闘ということになるでしょう。個々の論文を取り上げてみると,論理的な記述や内容把握の深さという点では,たしかに精粗や優劣もあったように思います。しかし,コロナ禍の中での就職活動という大きな困難の中でも,基本的には卒論作成という課題に対して,ゼミ生皆が真面目に取り組んでくれた。そのように考えています。そこで,ここでは皆さんも正面から取り組み,苦労もした論文執筆というものをめぐって,わたしが大事だと考える要点を簡単に指摘しておきたいと思います。そして,それを4年ゼミでの卒論作業を締め括る講評としたいと思います。 皆さんにとっては意外かもしれませんけれども,一つ強調しておきたいことは,調査を行い資料を調べ,文献を読み進めて,卒業論文を仕上げる。そのまとめや考察にあたって,付け焼き刃の「政策提言」などを無理矢理に行わないこと。この点をめぐって「禁欲」的であってほしいという要望です。要するに,論文の良し悪しの分岐は,問題の掘り下げや理解の深さにこそあるのだということです。私が調査や研究を進めて,論文を執筆する。そこでいつも感じることは,論文で書きうることは,観察の対象の「過去」の実像でしかないということです。事例調査の企画から実施を経て,事実の整理と原稿の執筆へと至る一連の過程では,理論的枠組みの検討の努力と合わせて,思わぬ時間が経過します。しかし,他方で観察の対象である実地の企業経営は,経営組織の面でも経営過程の面でも,常に変化と革新の運動の過程にあります。それ故,「現実」の観点から見れば,学問や研究はそもそも,いつも「周回遅れ」だということになるのかもしれません。けれども,研究や論文執筆はそれで良いのだ。私はそのように開き直って考えています。論ずべき対象である「問題」を自分がどのように理解したのか,その認識の枠組みと問題把握の深さこそが重要なのであって,敢えて言えば,学問の果たしうる社会的な貢献もその点にこそあるのだと思います。 やたらに「最新」を追いかけないこと,むしろ立ち止まって時間をかけてじっくり考えること,したがって付け焼き刃で場当たり的な「政策提言」などにそれほどの価値は無いこと。昨今の社会の風潮では,少数派の退嬰的な見解に過ぎないかもしれませんが,学問にとっては,こうしたことが大事であると私は考えています。論文執筆にあたっての心がけだと理解して下さい。 |
キーワード1 | 年次有給休暇 |
キーワード2 | 働き方改革 |
キーワード3 | 長時間労働 |
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