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学科 | 社会学科 |
年度 | 2021 |
ゼミ名 | 藤本 昌代 |
タイトル | 凝集性の低い集団における職業規範の研究――大工を事例として―― |
内容 | 職業規範を取り上げた先行研究は、そのほとんどが特定の職場を有する人々を調査対象としていた。では、従事者が特定の職場を持たず、流動的に働いている職業の場合はどうなのか。本稿は、そうした職業の一例として大工を取り上げ、インタビュー調査を行った。分析結果より、調査対象者2名の大工が有していた職業規範のうち制度的規範は「各種検査を通過する」、非制度的規範は「できうる限り頑丈で見栄えの良い和風建築の家を建てる」ことなどと規定できる。しかし、これらの職業規範は、大工の職業集団が小規模かつ流動的であることと、組合など組織化の機運が低いために同業者同士の接触機会が乏しいことを理由に局所的かつ個別的であった。そして、これによって離職しやすい風土と住宅の工業製品化を招きやすい環境が形成されたといえる。さらに、大工という職業集団の凝集性の低さには拍車がかかっており、その職業規範を再構築することには困難が伴うと指摘できる。 |
講評 | 本稿は20世紀の中期から後期にかけて建築業、特に大工職人の職業社会化に対するライフコース研究を質的調査によって行っているものである。20世紀の中期までの大工職人の「一人前」になる過程は、徒弟的な見て覚える手法であり、細部まで丁寧な仕事をすることを職業規範として内面化し、独り立ちするまでが描かれている。本調査により、高度成長期と団塊の世代の成人化による住宅供給に対する需要の爆発的な拡大から、工場でのプレ加工技術の発達、大工職に求められる技術の変化、棟梁という役割から、現場監督の下に位置する現場技術者へのシフトや分業化による新たな職種の誕生から現代における縮小など、時代と共に職業や技術が変化する様が示されている。本稿は高度成長により、職人数が増え、作業が増えることで、職人のもつ規範が必ずしも同一ではない(人によって重要と考えている技術や丁寧さが異なる)ことを議論している。本研究は馴染みのある職業でありながら詳細が知られていない中、詳しく調べた貴重な記録でもある。 |
キーワード1 | 大工 |
キーワード2 | 職業規範 |
キーワード3 | 凝集性 |
キーワード4 | |
キーワード5 | |
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