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学科 | 社会学科 |
年度 | 2021 |
ゼミ名 | 藤本 昌代 |
タイトル | 外国人技能実習生の実態と民間支援組織の役割―岐阜県の技能実習生支援シェルターにおける参与観察およびインタビューから― |
内容 | 本稿では、近年著しく増加している外国人技能実習生に焦点を当てた。岐阜県の技能実習生支援シェルターにて参与観察およびインタビュー調査を行い、技能実習生の来日経緯から日本においての仕事・生活実態について、また支援シェルターの技能実習生に対する役割について調査した。その結果、長らく指摘されてきた途上国への技能移転を通じた「国際貢献」という目的とは乖離して、安価で安定性の高い労働力として働く技能実習生の多様な問題が明らかになった。渡航時の高い手数料、監理団体のビジネスモデルという構造上や、転職の禁止、契約期間の固定という制度上の問題により、言葉や知識が乏しい技能実習生はさらに労働搾取を受けやすい立場に置かれていた。また、コロナ禍では窮状に陥る技能実習生の他に、在留資格変更や特別定額給付金等に関連して発生した新たな問題が明らかになった。支援シェルターは技能実習生に負担を負わせない方法で運営を行い、網羅的かつ迅速に解決できるように、SNSでの発信や他の支援組織との連携を密に行なっていることが明らかになった。 |
講評 | 本稿はコロナ禍の中、技能実習生が置かれた労働搾取の行動について、彼らが逃げ込む「シェルター」への1カ月間の参与観察という長時間をかけた調査研究である。本調査では「シェルター」に逃げ込む技能実習生が搾取される構造を中国語で丁寧にインタビューを行っている。同「シェルター」を運営するのは中国人ボランティアで、受け入れは人種にかかわらず、行われていた。逃げ込む技能実習生は中国人が多く、厳しい労働環境で労災で怪我をしても日本語が十分に話せない実習生に保健手続きを行わない企業があることがわかった。しかし、搾取する日本企業は大企業、中企業からの厳しい発注で苦しんでいる零細企業であり、弱者が弱者を搾取するという構造的な要素が発見された。また、技能実習生を搾取するのは日本企業だけでなく、同郷のブローカーによる搾取もあることが示され、非常に複雑な搾取のメカニズムの中に技能実習生が置かれていることが明らかになった。本研究は詳細があまり知られていない組織の実情を知るために多くの情報を収集した貴重な調査記録でもある。 |
キーワード1 | 外国人労働者 |
キーワード2 | 外国人技能実習制度 |
キーワード3 | 民間支援シェルター |
キーワード4 | 仕事・生活実態 |
キーワード5 | 搾取構造 |
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