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学科 | 社会福祉学科 |
年度 | 2021 |
ゼミ名 | 鈴木 良 |
タイトル | 犯罪被害者福祉の展望に関する研究 ~少年犯罪被害者遺族の生活史に依拠して~ |
内容 | 日本では、犯罪加害者に対する福祉的支援は整備されつつあるが、被害者に対する支援は未だに乏しい状況である。本研究は、犯罪被害者の犯罪自体の被害やそこに起因する生活困難と、犯罪被害者への今後の福祉的支援のあり方を明らかにした。 研究方法として、少年犯罪被害によって子どもを亡くした経験をもつ母親に聞き取り調査を行い、少年犯罪被害者遺族の経験を生活史法によって分析した。 この結果、第一に、事件に関する情報へのアクセスや意見表明の機会といった少年犯罪特有の司法手続きにおける課題を、社会福祉的視点を通して改革しなければならないと考えられた。第二に、遺族のジェンダーや子どもの存在といった家庭の多様性へ配慮した、ソーシャルワークの必要性を明らかにした。このように、マクロ領域およびミクロ領域の視点を通して、犯罪被害者福祉という新たな福祉領域を展望することが重要である。 |
講評 | 本研究は、社会福祉学の司法福祉分野において十分に検討されてこなかった犯罪被害者福祉という新たな領域に焦点を当てた意欲的な作品である。 少年犯罪被害者遺族である母親への丁寧なインタビューによって、遺族の生活史を描き、1)少年犯罪に特徴的な司法手続きの課題と、2)子どもへの影響やジェンダーに起因する生活困難や対処方法、3)地域のインフォーマルなサポートによる困難への対処方法を明らかにした。遺族内の個別の家庭や地域環境に起因する生活困難の実態及び対処方法を明らかにした本研究は、犯罪被害者ソーシャルワークのあり方を考える上で重要な示唆に富む。 社会福祉学やソーシャルワークの領域では、障害/高齢者の犯罪加害者の社会復帰や更生保護といったことに焦点が当てられ、地域定着支援のあり方についての数多くの研究がなされてきた。一方、犯罪被害者は、障害/高齢といった既存の社会福祉学の対象分類の中には規定されず、社会福祉的支援の対象として検討されることはほとんどない状況である。しかし、本研究では、犯罪被害者遺族は生活上の様々な困難を抱えており、社会福祉的な支援を必要とする存在であることが明らかにされている。支援の狭間に置かれた犯罪被害者遺族に焦点を当て、犯罪被害者福祉という新しい展望を切り開いた点に研究上の意義がある。 本研究で明らかにされたボーイスカウトや近隣住民によるインフォーマルなサポートの存在、遺族であるきょうだいへの影響、ジェンダーに起因する夫婦への影響や困難への対処方法は、これまでの犯罪被害者を対象にした手記や研究では検討されてこなかった論点であり、貴重な研究成果である。今後は、インタビュー対象者を広げ、他の家族形態を有する遺族との比較研究へと展開することを期待したい。 |
キーワード1 | 少年犯罪 |
キーワード2 | 犯罪被害 |
キーワード3 | 少年審判 |
キーワード4 | 生活史 |
キーワード5 | 犯罪被害者福祉 |
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