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学科 | 産業関係学科 |
年度 | 2021 |
ゼミ名 | 寺井 基博 |
タイトル | 転勤に関する雇用管理の変化と今後 |
内容 | 本稿では転勤問題をテーマにそれに伴う様々な問題を扱っている。近年ジョブ型への移行という流れに伴い、従来のメンバーシップ型の雇用慣行によって行われていた転勤に対しても見直しが必要であると感じた。転勤の問題が労働者個人のものではなく、単身赴任等のデータから労働者の家族にも影響を与えるものであると分かり、より配慮をしなければならない問題であり、ワーク・ライフ・バランスの観点からも大きな問題である。この問題に対して企業が行う施策も非常に多く、労働者の配慮とともに、優秀な人材の確保など転勤に対する施策を講じることは企業にとってもメリットが存在している。さらに転勤の有無を区別する制度として一般的となっているコース別雇用管理に対して導入している企業の考察を通して、有用性や問題点を導き出した。さらに裁判例を用いて、司法判断も転勤に関して労働者に対して配慮するような判決を行っていることが分かった。社会全体の動きとして転勤に対して変化を求めているが、個々の企業がどのようにそのニーズを反映していくのか、注目していきたい。 |
講評 | 卒業論文の作成は、複数の先行文献を集めて読み込み、時にはインタビュー調査等も行って、そこからの知見をもとに自らの考えを文章にまとめるという地味で忍耐を要する作業なので、各人が関心をもって取り組むことができるようにするためにテーマは自由とした。とはいえ、産業関係学科での学びの集大成として論文を作成するので、「テーマと産業関係学との関係性が説明できること」という条件をつけた。 提出された卒業論文は、①「転勤に関する雇用管理の変化と今後」、②「日本における障がい者雇用促進に向けた倫理改革-スピリチュアル経営を用いて」、③「中小企業における労働の特徴と社長と従業員の関係性」、④「企業におけるテレワークの課題と実現可能性」、⑤「新卒一括採用批判の考察」、⑥「日本の学校現場で職業教育が根付かない要因-学校から社会への円滑な移行のために」、⑦「ウォルト・ディズニーのホスピタリティ-従業員教育制度の観点から」、⑧「理論と経験-『やる気』に必要なものとは」、⑨「キャリア権と非正規雇用の働き方について考える-キャリア権を意識した職業選択・能力開発は雇用安定に結びつくか」の9本であった。 ①、②は法規制と企業運営のあり方に関するもの、③~⑤は企業の実態や課題に関するもの、⑥~⑨は職業教育や職業訓練に関するものに大きく分けられる。③と⑦はインタビュー調査に基づく実証研究、それ以外のものは文献研究である。①は、厳格な解雇規制を基本として企業に広範な配転権限が認められているが、労働市場の変化に合わせて配転権限を制約すべきという見解を複数の文献に基づいて検証している。②は、企業が障がい者を雇用する倫理的な目的に着目して、障がい者雇用の促進をいかにして図られるべきかを考えている。③は、自身の父親にインタビュー調査を行って、中小企業の経営の実態と苦労を詳細に記述した。④は、テレワーク実現の課題について、産業関係学の知見に基づき、インフラ整備だけではなく仕事の配分や実施方法に関するルールの見直しが必要となることを論じている。⑤は、新卒一括採用およびその前提となるメンバーシップ型雇用への批判について、丁寧な文献レビューにもとづいて考察している。⑥は日本では職業教育は実質的に企業にゆだねられて国や産業横断的な制度が整備されてこなかった点について、文献をもとに歴史的、産業関係学的な視点から検証している。⑦は、インタビュー調査によって複数のテーマパークの教育訓練制度を整理し、ホスピタリティの点から教育訓練制度に違いを生じさせるマネジメントの違いを明らかにしている。⑧は、労働者の「やる気」を心理学等の理論と企業事例とを対比させて、実践的なモティベーション管理の方法を探っている。⑨は、企業間移動を含めた継続的な就業保障の基礎となる「キャリア権」という法概念について、育成人事や査定に基づく業績管理を基本とする日本企業の実務の観点から評価している。 論文作成に費やした時間に比例して、論点把握や考察が深まる傾向にある。文献レビューやインタビュー内容の考察などの地味な作業の積み重ねが、論文の内容に大きく影響している。先行文献のレビュー、問題把握、文章構成などに精粗はあるものの、ゼミ生全員が卒業論文執筆に真面目に取り組んできたことは大いに評価に値する。この卒業論文は紛れもなく「大学における勉学の到達点」であり、各人はここから社会人としての一歩を踏み出しさらに研鑽を積んでもらいたい。 |
キーワード1 | 転勤 |
キーワード2 | 単身赴任 |
キーワード3 | コース別雇用管理 |
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