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学科 産業関係学科
年度 2021
ゼミ名 冨田 安信
タイトル 東京一極集中から読み解く日本の未来
内容 本論文では、東京一極集中を軸に、なぜ東京一極集中という現象が起こっているのか、どうして人やモノは東京に集まるのかについて、文献や統計データを基に分析し、東京一極集中の実態と、今後の日本はどうあるべきかについて考察している。日本の東京一極集中の現状は深刻になりつつある。東京一極集中が起こる要因として、①修学・就職等のために20代前後の層が東京に流入、②魅力・利便性・自由度の高さ等を求めて東京に流入、③一度東京に来ると地方に移住しにくい環境、の3つが考えられる。また、大卒女性の増加も一極集中に影響しており、女性が経済力を持ち「結婚・子育て」の選択肢が負担になると、独身志向となり、少子化、人口の減少につながっている。進学・就職・結婚・子育て等、人が移動するタイミングで地方に移動したいと思わせる政策が必要となる。また、東京集中を緩和させる策の一つとして、副首都ビジョンに注目した。万が一、災害によって東京が機能しなくなった場合に、バックアップできるような副首都の存在など、日本の東京一極集中について具体的に述べている。
講評 今年度は 11 人が卒業論文を提出したが、女性労働に関連するテーマに取り上げた学生が 4 人と多かった。「出産・育児を経た女性が生き生きと働ける社会を実現するには」では、女性も出産後、仕事と育児 を両立させながら働き続けることができるようになったが、長時間労働を前提とした働き方を是正しな ければ、管理職昇進など女性が活躍することは難しいことがわかった。「雇用格差の解消に向けて-同一 労働同一賃金の必要性-」では、正規雇用者と非正規雇用者の格差を解消するためには、労働組合が正規 雇用者だけでなく非正規雇用者も組織化して、同一労働同一賃金の実現に取り組むことを提案している。 「女性のワークライフバランスの現状と今後」では、女性の働き方のM字型カーブが解消したスウェーデ ンとアメリカを比較し、男女平等よりも企業の経営戦略としてワークライフバランスが進んだアメリカ が日本の参考になると結論づけた。「共働きの目指すべき姿とは」では、男女共同参画社会における共働き世帯は、男性の家事・育児への参加が不可欠であり、男性の育児休業取得がそのきっかけになるのでは と考えた。 企業の人事制度をテーマに取り上げた学生が 2 人いた。「「新日本型雇用慣行」を考える-メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へー」では、これまでのメンバーシップ型にジョブ型の要素を取り入れるための新しい雇用管理として、新卒・中途一括採用、ジョブ型生産性序列、そして、職業別労働組合の3つ を提案している。「高齢者の雇用について-定年制度の今と未来-」では、人事制度の1つである定年制 度を取り上げており、人手不足の時代を迎えて、人手不足を解消し、高齢者のスキルを最大限活かすため にも定年廃止が望ましいと結論づけた。 2 人の学生が AI が雇用や職業に与える影響をテーマに取り上げた。「AI による雇用喪失と社会システ ムの変化」では、AI がこれまで知的労働者が担っていた仕事の多くを代替するようになり、多数の無業 者が発生するという予測を紹介し、彼らは勤労所得によって生活することができなくなるので、ベーシッ クインカムによって人々の生活を支えざるをえなくなると考えた。また、「職業におけるAI 化とアナウ ンサーの将来」では、AI アナウンサーは、「読む」という点では人間より優れた能力を発揮するが、アナ ウンサーには、「読む」だけでなく、「話す」「聴く」そして「自分の意見を述べる」という能力も求められるので、AI にアナウンサーの仕事をすべて任せることができないという結論に達した。 職種・職業をテーマにとりあげた学生も 2 人いた。「これからの戦略的広報活動」では、テレワークが 普及したために社内コミュニケーションが不足するようになったが、それを補うような広報活動として、 社内報だけでなく、社内ラジオという新しい取り組みに注目した。レーシングドライバーという異色のテーマに取り組んだのが「日本人レーシングドライバーのキャリア形成と実態」である。産業調査実習でレーシングドライバーになるまでのことを調査したが、卒業論文でさらに研究を進め、レーシングドライバーになってからも、スポンサーである自動車メーカーの意向に左右され、海外挑戦などドライバー自身が 望むキャリアを歩むことが難しいことがわかった。 最後に、東京一極集中という労働市場全体のテーマを取り上げたのが「東京一極集中から読み解く日本 の未来」である。東京一極集中を是正するためには、人々が地方で暮らしたいと思う労働条件・生活環境 を整備するとともに、災害等で東京が機能しなくなったときに備える副首都構想にも注目した。 今年度のゼミ優秀卒業論文には「「新日本型雇用慣行」を考える-メンバーシップ型雇用からジョブ型 雇用へー」を選んだ。産業関係学科で 4 年間学んできたことを振り返るというかたちで、メンバーシッ プ型雇用のこれまでの日本型雇用慣行のメリット・デメリットを整理し、デメリットを解消するために、 ジョブ型雇用の要素を取り入れることを提案している。具体的には、新卒・中途一括採用、ジョブ型生産 性序列、そして、職業別労働組合の3つを提案しているが、これらはアイデアの段階に留まり、まだまだ 議論していかねばならない。それでも、卒業論文を書くことを通じて、産業関係学科で学んだことを振り 返ることができた点を評価したい。
キーワード1 東京一極集中
キーワード2 地方創成
キーワード3 大卒女性
キーワード4 人口減少
キーワード5 副首都
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