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学科 社会学科
年度 2022
ゼミ名 森 千香子
タイトル 京都市内商業界における<西陣>のポジション ―伝統継承者としてのジェントリファイアー―
内容 本論文は、脱工業化の流れによる西陣機業衰退後の西陣地域へ新規流入してきた事業者らによって、西陣という語がどのように扱われ、空間として生産されているのかを明らかにすることを目的としている。調査対象として西陣地域に生まれ育ち、伝統的な家業を継ぐ者と、新規参入してきた者を設定し、インタビュー調査と参与観察を行った。
結果として、西陣機業が駆動していた頃を知っている者と新規参入者間の〈西陣〉語義には差異が認められた。新規参入者は〈西陣〉を構築的に把握せねばならず、従って語義が大別して3つに分岐していることを確認した。その中でも「オーセンティシティ」としての語義は西陣の育んできた歴史を汲んだ語義であり、伝統継承者としての新規参入者の姿を明らかにした。また、「オーセンティシティ」語義に立脚して生産される〈西陣〉は京都市内商業界における象徴闘争としての含意があり、京都市などが目指す西陣像とは乖離があることを明らかにした。
講評 西陣という地名は正式には存在しないにもかかわらず、たしかに存在するものとして人びとに理解されている。本研究はこのような西陣をめぐる逆説を出発点とし、このような空間の生産・再生産の担い手として、さまざまなアクターのなかでも他地域から西陣に新規流入し、さまざまな商売を営むジェントリファイアーに注目する。ジェントリファイアーたちの多くは社会経済的な要因から西陣への転入を余儀なくされてきたが、地域に歴史的に蓄積されてきた文化資本を利用し、西陣を再解釈して、「オーセンティシティ」という新たな意味を付与していることを示し、そのような実践が京都市内の商業空間における象徴闘争において持つ意味が検討された。長期間にわたる参与観察と丁寧なインタビューの分析も良かったが、何よりも本論文が秀でているのは、具体的な調査内容を抽象化し、概念化、理論化した点である。「社会学的分析とはどういうものなのか」について悩む学生にもぜひ参考にしてもらいたい。
キーワード1 西陣
キーワード2 ジェントリファイアー
キーワード3 象徴闘争
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