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学科 メディア学科
年度 2022
ゼミ名 竹内 幸絵
タイトル 授業を倍速で受ける人たち ―大学の授業形態の変化とコロナ禍以降の学び方―
内容 新型コロナウイルス感染症によって起きた大学の授業形態の変化、特に授業のオンデマンド化と、若者で一般化しつつある動画の倍速視聴、これらの二つの問題が重なる、大学のオンデマンド授業の倍速視聴について調査した。その結果、9割を超えるほとんどの学生はオンデマンド授業を倍速再生する経験があった。その行動の裏には、現代の若者が持つ、コスパ・タイパを強く求める価値観が見える。また、対面授業には人とのつながり・コミュニケーションを、オンデマンド授業には時短や楽さなどのコスパ・タイパを求めている。そして、ゼミでは対面授業、一般教養科目ではオンデマンド授業と、授業ジャンルによって求める授業形態も異なった。このように、コロナ禍で対面とオンラインに求めるものについての明確なラインが引かれた学生は、社会人になってからも、オンラインではより効率的に、よりコスパ・タイパを追求し、一方で対面では人とのつながり・コミュニケーションを求めた数字では表せないような人としての喜びを求めるようになるのではないだろうか。
講評 エンタメコンテンツの価値の変容と早送り(倍速)をテーマに卒論を書こうとしていたが矢先に、自身の考えのほとんどを書いた(と本人が感じた)書籍、『映画を早送りで観る人たち』が出版された。筆者は落胆し、テーマを全面変更をしようとしていた。しかし当該の書籍が対象としていたのはエンタメのみである。映画関係サークルに所属している筆者が映画を含むコンテンツを対象とした論文を書きたかったことは理解できたが、指導者としては、大学生活のかなりの部分をコロナ禍に覆われた彼ら世代だからこそ、コロナ禍の大学生活×倍速視聴、つまり、オンデマンド配信されるオンライン授業が何をもたらしたのか、これを受ける態度について考えてほしかった。少し教員が押してしまった感はあったが、最終的に彼はこちらにテーマを転換した。
コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスを重視するZ世代にとって、授業は効率的に受けられるに越したことはない。「タイパ」という略語そのものが近年の彼らの価値観をあらわしている。研究の出だしは遅くなったが、同世代の学生に価値観を尋ねるサーベイを行い分析に取り組んだ。その結果から筆者は、学習の質と、人としてのつながりという相反するキーワードを見出した。
卒論発表会では筆者はこのように話した。「ぼくたちが1回生の時には対面授業という一択しかなかった。しかしコロナ禍は、オンライン授業、それもリアルタイムで行われるオンラインと、録画配信という選択肢を増やした。ぼくたちの大学生活はコロナ禍という大きな困難に見舞われた。しかしこうした選択肢が増え、相対化されたことによって、ぼくたちは授業に求めることは何なのかを、より深く考える機会と環境を得たのだ」。それぞれのメリットデメリットをシビアに考える第一世代となった彼らはこの春卒業し、就職する。これが社会をどう変えるエンジンとなるのか。その意味を考えさせてくれる卒論となった。
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