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学科 メディア学科
年度 2022
ゼミ名 竹内 幸絵
タイトル 「M-1」優勝者のネタから見る「ウケる」ネタの変遷
内容 マヂカルラブリーの「漫才ではない」論争のように漫才が変化しているという現状に対し、人々に「ウケる」漫才が2000~2010年の第一期と2015~2021年の第二期で変化しているという仮説に基づき検証を行った。漫才を5つに分類した先行研究に独自の解釈を加え、「M-1」歴代優勝者17組のネタを分類した。また彼らのネタを文字起こしし、文字数、ネタ時間、観客がウケたタイミングや量などから多角的に分析した。その結果、第一期と第二期では優勝者のネタの傾向が異なり、それによってその時期における「ウケる漫才」も異なっていることが分かった。そこには「M-1」という漫才を代表する大会に刻まれた「踏襲と破壊」という精神が色濃く出ており、第一期では伝統的な掛け合い漫才と「二人コント」、第二期では「二人コント」と「実況類B」というようにそれまでの漫才を受け継ぎつつ新しい漫才を生み出すような変化が起きていた。
講評 この論文が圧巻なのは、何と言っても本文とは別に、「M-1」優勝者決勝ネタの17組の文字起こし、2001年優勝 中川家から2021年優勝 錦鯉まで、全3400文字62頁に及ぶ添付資料が提出されたことだ。ここには聴衆の笑いが〇◎で記載されており、検証の詳細が具体的に示されている。
人々にウケる漫才が変化してきているのではないか。最初にこの疑問を持ち、先行研究を精緻に調べ、(漫才に関する先行研究の多さを指導者は筆者から教えられた)、そこで言及された内容に同意しつつも、まだ論じられていない点をあぶり出し、その検証が必要と説き、研究はスタートした。そして研究方法を吟味したうえで、上記の膨大な書き起こしに着手したのである。
筆者は語数や「ウケる」までのスピードなどを分析対象とし、漫才ごとのその違い、時代を追った変化を捉えて、漫才のタイプ(実況類B、対話型、など)を分類していく。分類では先行研究には無い新たな分類、新しい軸として、本論独自の分類「二人コント」も提起した。そして漫才史を俯瞰する試みにおいては踏襲と破壊~新しい笑いを常に模索している漫才が過去のスタイルを含みつつも壊していく現象~を論じた。コントが融合された新たなスタイルは関西に有利とされるM1グランプリへの関東勢の挑戦であり、非関西の芸人が不利と言われる時代はもう過ぎたのかも知れない、という最終的な考察は説得力があり、独自性に優れている。
本論からは20年で「笑い」が変わってきたことが実感できる。そしてそのような「笑い」の変化も社会の要請のひとつだと考えた時、20年の時代の流れの意味を考えさせられる。『漫才』というジャンルに、実証的に真正面から取り組んだ、正統派の力作の卒論である。
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