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学科 メディア学科
年度 2022
ゼミ名 竹内 幸絵
タイトル 米津玄師が普遍的な音楽「Lemon」にたどり着くまでの心境の変化とそれに伴う歌詞の変化
内容 本論では米津玄師がボカロP「ハチ」として活動していた2008年から、最大のヒット曲であるLemonを生み出す2018年まで普遍的な音楽を目指す10年間の心境の変化とそれに伴う歌詞の変化を辿った。
心境の変化については10年を6つの時代に分け、各時代のインタビュー記事から読み取った。次に歌詞の変化については、大衆に受け入れられやすい歌詞の条件として①「動詞、助動詞の比率が名詞、感動詞よりも多い」②「わかりやすい言葉で、ポジティブな内容である」の2つを設定し、心境の変化が歌詞に反映されているかどうかを調べた。
インタビュー分析では、時間と共に米津が音楽を作る上での主体が自分から、聴き手や、テーマ作品といった他者に移っていく変化が見られた。そして、それに伴い歌詞も大衆に受け入れられやすい歌詞の条件を満たすものに変化していた。
そして、最大のヒット曲であるLemonはボカロ楽曲とJpopの特徴を併せ持つ、非常に普遍的な楽曲であることが分かった。
講評 ボカロイド楽曲と呼ばれる音楽がヒットを飛ばすようになった近年の音楽をどのように読み取っていくのか。このようなテーマは2022年に大学4年生という彼らこそが取り組んでほしいテーマであり、指導者もぜひ取り組んでほしいと筆者を後押しした。彼が選択したのは米津玄師分析。ボカロ・プロデューサーから、大衆音楽へ。米津玄師は確かにこの4年間で一気にスターダムにのしあがった。それはおそらく近未来には「米津以前・米津以後」といった分類がされるのではないかと(音楽研究者ではない私が)思うほどに、大きな変化だった。本論はそのとてつもなく大きな存在である米津の10年間の変化を、楽曲の歌詞分析と、当人へのインタビューの読み込みによって行った論文である。
ボカロ・プロデューサーを対象とする「今どき」のテーマではあるが、行った研究は極めて地道な調査で、その物量の多さに筆者も途中でくじけそうにもなっていた。筆者は、「ボーカロイド曲」の特徴を捉えるべく先行研究が行っていた研究手法~歌詞の品詞分解から大衆的な音楽とボカロ音楽の特徴を抽出する~を踏襲し、膨大な歌詞を書きとり、その品詞分析に挑んだのである。先行研究に倣い、Web ブラウザ上で使用できる形態素解析支援アプリ「Web 茶まめ」(川口・薦田・堤2017)を用いて品詞分解したのだが、それでも作業量は膨大だった。
分析結果は10年間を7期に分けた詳細なものになった。2008年から2018年の10年間に、いくつかの転機を経て、米津の曲は次第に大衆的な楽曲へと変化していった。ところが、現時点で最大のヒット曲であるLemonの品詞分解の結果は、動詞助動詞対名詞・感動詞が1:1となり、大衆的かつボカロ的という結論になった。つまりこの曲は既に大衆化の道を歩んでいた米津が、個人的な、ボカロPの時に自分のために作った傾向にゆり戻った作品だった。しかしその曲が、多くの人の心を掴んだ。米津だからこそできた偶然の作品であるという筆者の結論は感動的でさえあった。強くて弱い米津像の実際に曲分析から迫る論文となった。
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