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学科 メディア学科
年度 2022
ゼミ名 竹内 幸絵
タイトル 『となりのトトロ』はなぜ「懐かしさ、心が落ち着く」といった感情を生み出すのか ー日本人の古い自然観、宗教観の観点からー
内容 「『となりのトトロ』には日本人が抱く古い自然観、宗教観が散りばめられている結果、懐かしさや穏やかさといった感情を生み出すのではないか」と仮説を立てた。
そこで古い自然観を①自然と共存したことによる親しみの感情。②自然災害から芽生えた畏怖の感情。の2点、また古い宗教観は、神がありとあらゆる自然物に宿ることを指す八百万の神を信仰する自然崇拝であると定義付けを行い、内容分析に取り組んだ。結果、自然との親和性や自然崇拝を想起させる場面が複数描かれていることを提示し、仮説が正しいと証明した。
また『となりのトトロ』と『千と千尋の神隠し』は作品構造の軸が同じでありながら、自然については生きている自然と死んでいる自然が対照的に描かれていることを明らかにし、理想的な日本と悪しき日本を表現しているのではないかと考察した。
以上から、自然との付き合い方を再び考えるべきだとのメッセージを発信していると結論付けた。
講評 「となりのトトロ」は名作だ。従ってこの作品を対象とした先行研究も多く、卒論のテーマとして選ぶ際はどのような視点から取り組むのかが大きな問題となって立ちはだかる。本論はこの、卒論としては大きなテーマとも思われる著名な先行研究の多い映画作品に果敢にとりくんだ卒論である。特筆すべきは卒論においてはこれ以上は難しいだろうと思われるほどに多くの先行研究を読み込んだこと、そのうえで研究目的を見いだし、とりくんだことである。それは「日本人が古くから持つ自然観、宗教観と、『となりのトトロ』との関係性」であった。
筆者はこの視点をまず宮崎駿のインタビューから読み取った。制作者に底流する、日本人の古い自然観 自然との付き合い方を拾い上げた。次に、これを対象として分析した先行研究が存在していないことをつきとめ、問題提起し、テーマに説得力を持たせている。
設定したリサーチ・クエスチョンに、本論では画像分析とセリフ・場面展開の分析を主として迫っていく。研究途中は指導者とは少ない会話のみで、ほとんどの文章を自身の思う方法で展開していった。キーワードは楠、御神木、祈り、神、しめ縄、お社、農業大国、踊り、まつり、温和な土地柄と農業など。さらには台風(強風)を神聖視し、その化身である猫バスも風のこわさを纏っている、けれど「ステキ」といったセリフがあり、筆者はここに、自然に親しみを感じる感性や要因を読み取っている。異教訪問話という意味では共通性がある「千と千尋の神隠し」が、自然への支配し自然を切り崩した果ての情勢への警告を示す一方「となりのトトロ」においては活きている自然との共存、自然物への崇拝が主テーマとして存在していると結論付ける。
先行研究を踏まえ独自の視点で切り込んだ新たな「となりのトトロ」論である。
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