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学科 産業関係学科
年度 2022
ゼミ名 上田 眞士
タイトル 正規雇用と非正規雇用間の雇用格差を考える ―同一労働同一賃金の必要性―
内容 1990年代以降、雇用の多様化が進み、非正規雇用として働く労働者が増加傾向にあり、2021年には役員を除く雇用者数の約4割もの割合を、非正規雇用労働者が占めている。非正規雇用における問題は、様々なものが考えられるが、特に正規雇用と非正規雇用間の賃金格差の問題が顕著である。本論文では、賃金格差を是正するための取り組みとして、同一労働同一賃金制度を取り上げ、理解を深める。前半では、正規雇用と非正規雇用の定義づけを行い、非正規雇用が拡大した要因について、雇用形態の多様化、外部労働市場の拡大の2点に着目し、考察を深める。後半では、同一労働同一賃金改革について、その趣旨や目的をさまざまな視点から考え理解を深める。また同一労働同一賃金制度は、パートタイム労働法の改正を経て提唱されたものであり、法改正の流れと内容に着目し、同一賃金同一賃金の意義や目的を考察する。さらに、実際の企業の非正規雇用にける待遇改善に向けた取り組みの事例調査を通じて、今後の企業の労務管理において、同一労働同一賃金制度の導入だけでなく、正社員登用制度の充実を図ることが必要であると結論付けた。

講評  皆さんから提出された卒論のテーマを分野別に大きく括ってみると,「幸福度とWLB,働き方改革」「非正規雇用の労働問題と企業別組合」「AI社会における営業職の働き方」「美容師の働き方と労働環境」「東京一極集中と地方における雇用創出」等々となっています。たしかに個々の論文を取り上げてみると,その内容に精粗や優劣もあったように思います。けれども,コロナ禍の下での就職活動という困難の中でも,卒論作成という課題に対して,基本的にはゼミ生皆が真面目に取り組んでくれた。そのように考えています。そこで,以下では皆さんが苦労をしてくれた研究論文の執筆というものをめぐって,わたしが大事だと考える要点を簡単に指摘して,それを卒論作業の締め括りの講評としたいと思います。
 まず労働問題に限らず様々な社会的課題に,積極的な関心を持つということが,第一に大事な点だと思います。成長を第一義にしてきた経済社会は,格差社会の問題一つをとってみても,少なくとも先進国を見る限り,今日,大きな曲がり角に差しかかっているように思います。論ずべきこと,解明すべきことは,多発的でありしかも多層的であるといって良いでしょう。そのような社会的課題と切り結び,現実に対して緊張感を持って立ち向かう姿勢が,やはり社会科学の領域の研究には必要です。
 また少々矛盾するようですが,論文の出来映えを決めるものは,政策提言の良否にではなく,問題把握や理解の深さにこそあるのだということ,この点も第二に大事なポイントであるように思います。言い換えれば,「わかりたい」という気持ちこそが大事なのだ。この点を強調しておきたいということです。昔からの有名な金言に「幽霊の正体見たり,枯れ尾花」という言葉があります。敢えて勝手な例え方をすれば,研究を通して「正体」を突き止めれば,人を脅かす怪異な「幽霊」も消えて行くのだと思います。社会科学的な認識の深まりが,そうした意味で人間社会の「自由」を拡大する。今も心に残る,若い頃に私が先生から教わった考え方です。役立つこと,実用的であることも確かに大事です。けれども私は「わかりたい」という気持ちを一番大切にして欲しい。そのように考えています。


キーワード1 非正規雇用
キーワード2 同一労働同一賃金
キーワード3 雇用格差
キーワード4 働き方改革
キーワード5  
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