卒論作成を振り返って
比田勝 有梨
(メンセンディークゼミ)
私は、「自助グループにおける薬物依存症者の回復」というテーマで卒論を作成しました。このテーマにしたきっかけは、昨年度から京都 DARC(薬物依存症者リハビリテーションセンター、以下ダルクと表記)の方々とバザールカフェという場で関わるようになり、今年度は社会問題実習の実習生としてより深く学び、接する機会があったからです。
テーマ設定の際、まず私は入学から今までの学びや自分の興味の移り変わりを振り返りました。見てみるとまとまりがなくて、広く浅く、色んなことに手を出している状態でした。このことから、やはり私は相当な飽き性であると感じ、思いつきのテーマでは必ず途中で限界がきてしまうと考えました。また、文献だけが頼りの論文では面白みに欠け、私らしさが出ないのではないかという思いもあり、できるだけ当事者の方と関わりながら取り組めるテーマにしようと決めました。そこで、一年以上の関わりがあるダルクの方々に協力をお願いし、実習と並行して、執筆することとなりました。
作成が始まって最初にぶつかった壁は「彼らを研究対象として捉えることへの抵抗感」です。彼らとは今まで、ボランティアと当事者というそれぞれの立場がある上で、カフェでは同じ「スタッフ」という対等な関係を保ってきました。しかし卒論のテーマとして考えるためには、彼らを「研究対象」として捉えなければならず、対等性が崩れてしまうように思えました。彼らの思いや行動を分析したり文献と照らし合わせたりする作業が、今まで築いてきた彼らとの信頼関係を壊してしまうことにはならないかと、非常に複雑な思いで「研究」を進めていきました。しかし結果的にこの壁を乗り越えられたのは、先生や院生の方々に相談をしたことと、ダルクの方々に応援して頂いたことが大きいです。まず社会福祉学においては「人」が研究対象であることも多いですが、それが単なる研究で終わらずにいかに現場に還元していけるかが重要であり、現状を広く一般に知らしめる、利点や解決策を明らかにするという面で研究もまた支援の一環になり得るという考え方は、作成における大きな支えでした。また、ダルクの方々が私の取り組みに賛同してくださり、経過を気にかけて温かく見守って下さったことも励みとなりました。
この取り組みが単なる「卒業のため」に終わらず、彼らのことを一人でも多くの人々に知ってもらうこと、そして彼らの活動を微力ながらも後押しできるような内容にすることを作成の目標とし、最後まであきらめずにやり遂げることができました。書き上げてみて、振り返れば反省点は多々ありますが、ダルクの方々をはじめ、協力し励まして下さった方々にじっくりと読んで頂けるだけのものが出来上がったと満足しています。
私の所属するマーサゼミでは、卒論作成については個人発表を毎週二人ずつ行い、興味のあるテーマについて発表後、質疑応答をしました。発表後の時間は特に重要で、自分では気づけずにいた新たな視点や疑問点をゼミ生から教えてもらう、または関連した情報を提供し合える有意義な時間となりました。ゼミ生の扱うテーマはどれも本当に個性的で一見まとめようがないのですが、その中から思わぬ共通項が見出されたり、様々な社会問題と福祉学の結びつきを皆で探ったりするのは、マーサゼミならではの取り組みだと感じています。
これから卒論を取り組む皆さんには、以下のことを意識していただけたらと思います。(1)できるだけ早くから情報収集に取り組む。(2)テーマ設定は、自分が長く関心を示せるものを慎重に選ぶ。(3)できるだけ早くからアウトラインを作成し、枠組みをしっかり固める。(4)やる気が湧かないときは、当事者やそのテーマに関わる人々に会いにいく。
卒業論文は長い学生生活の集大成となるものです。最後まであきらめずに、自分の今まで培ってきたものを信じて、頑張って下さい。ありがとうございました。