野村裕美ゼミ 青森県下北郡・風間浦村交流報告

メディア学科 渡辺武達ゼミ 沖縄研修 事後報告書

2012年10月25日 渡辺武達

◊はじめに

  2012年9月19日(水)から22日(土)まで、三泊四日でメディア学科渡辺武達ゼミ恒例の沖縄研修を実施した。
  例年この研修は秋学期開始直前に行われ、10年以上続いているものだ。その目的は、一つ目に、沖縄大学コミュニケーション学科(緒方修、須藤義人先生)ゼミとの研究発表・交流。二つ目に、琉球新報社・同社新聞博物館の見学。三つ目に、嘉手納基地見学やひめゆり平和祈念資料館、旧海軍司令部壕といった施設を訪ね、戦争と現在も残る米軍基地の問題に関し、現場で同じ世代が語り合い学ぶこと等が挙げられる。
  今年もそれらの目的を含んだスケジュールを立て、実行した。そして、予定以上の学習効果を得ることができた。以下はその概略である。

1日目(19日、水)
  積み荷の関係で飛行機の出発時間がずれ、予定より30分遅れた13時30分に那覇空港に到着。その後は予定通りレンタカーを受け取り、15時30分から一時間程ひめゆり平和祈念資料館(糸満市伊原671-1)を見学した。
  この資料館では、戦時中に使用された女学生の制服や生活品、医療用品をはじめ、様々なものが展示されていた。中でも学生たちが印象づけられたのは、終戦直前に亡くなった女学生や職員関係者の遺影が壁一面に展示してあった最後の部屋である。そこには遺影とともに生前の様子や死の状況が記してあった。花盛りの彼女達が、身近に死を感じ、恐怖を感じつつも必死に生き、そして理不尽にも死に追いやられていった事実に胸を打たれた。
  16時45分からは、琉球ガラス村(糸満市福地169)を見学した。そこでは琉球ガラスの製作過程を誰でも気軽に見学することができる。色彩あざやかな琉球ガラスは、米兵とその家族が捨てた飲み物の瓶を集めて精製したものが始まりだと知った。売られているガラス製品はどれも魅力的で美しく、そこに沖縄人のたくましさを同時に感じた。
  琉球ガラス村を見学後は那覇市に戻り、レストラン「めしCaféとらえもん」(那覇市牧志3-2-61)にて夕食、20時30分にサンプラザホテル(那覇市安里138)にチェックインを済ませ、翌日の沖縄大学生との研究交流の準備をした。
2日目(20日、木)
  8時30分にホテルを出発し、旧琉球王朝の首里城(那覇市首里金城町1-2)を訪れた。1429年から1879年の間成立していた王国の象徴としての首里城は、その一部が二千円札(沖縄海洋博時に作られた)に印刷されていることでも有名である。入場チケットを購入する窓口では、実際にお釣りとして二千円札を渡された。
  首里城は、中国をはじめとしたアジア諸国の文化の影響を受けながら、独自の琉球文化が作られてきた経緯をよく示していた。中国から留学しているゼミ生は、「中国の高校では、琉球は中国の領土だと教えられた。しかし実際には、琉球は独立した一つの国であったことを学んだ」と新しい知見に感動していた。
  11時からは旧海軍司令部壕(豊見城市字豊見城236)を見学した。内部の通路や電灯が整備されてはいるが、当時の様子を残したままの壕内部は、湿気が多く足場も悪かった。兵士達が自決した手榴弾の鉄片の後も生々しく残っており、現在より遥かに悪環境だっただろう当時を思い浮かばせると同時に、本土決戦をさけるために沖縄が犠牲にさせられたことがよく理解できた。
  正午過ぎにそば処「美ら花人人」(那覇市安謝2-4-3)に到着。昼食を済ませて、13時30分から琉球新報社・同社新聞博物館(那覇市天久905)を訪れた。新聞博物館岡田輝雄館長の案内で展示された写真や取材用器具などの説明を受け、本社編集局内も見学し、ニュースが新聞になるまでの流れや、各部署の業務内容などを学んだ。社内では殆どの男性が沖縄伝統のシャツ、かりゆしを着用しているのが印象的であった。また同社では毎日、戦争に関する記事を掲載していることを知り、そこには県民の意見が色濃く反映され、沖縄のメディアと本土のメディアとの温度差を感じた。
  沖縄では、前回の県民大会に10万3千人もの参加者があり、米軍基地やオスプレイ配備を拒否する市民の声が上がった。琉球新報ではこの集会について一面と最終面の横長の1つの大きな記事として掲載し、その現物を実際に見ることができた。また、岡田館長には日本における沖縄の「構造的被差別」を丁寧に説明していただいた。日本における米軍基地の約75%が沖縄に存在し、沖縄の土地面積の20%を占める。米軍基地には一等地が選ばれ、人々は仕方なく基地のすぐ近くに家を建てた。この事実を知っている本土の人が、一体どれだけいるのか。「基地の近くが危険ならば、遠くに住めば良い」といった意見などは恥ずかしくて言えたものではないのだ。この沖縄県民が置かれた不条理な現状を、本土の我々は知らなければならない。ゼミ生の意見として、「沖縄のような危険な状況下にない政治家が、基地の問題を扱うのはフェアではない」という声さえ出たのは当然であった。
  16時からは沖縄大学の同窓会館をお借りして、沖大生との研究発表・相互批評を行った。ここでは、元琉球朝日放送報道制作局長の具志堅勝也さんにも参加していただいた。渡辺ゼミからは、三組が発表を行った。一組目は鈴木里枝・西野文乃で、制作した映像作品「私と悩み~2012年夏~」を上映しビデオ制作について意見交換した。二組目は森野令那・井上彩・矢野望月によるSNSに関する研究発表。三組目は、吉川雄大・熊田智・福田香澄による新興宗教に関する報道のあり方についてであった。
  沖縄大学側からは、「街遊びの流儀」と題した発表が行われた。沖縄大学の学生達は、ある出来事やメディアについて研究した渡辺ゼミ生とは違い、アナログ媒体と郷土の歴史的観点からの研究と活動が中心であった。実際に自分達で町に出掛けて取材し、紙に手書きでポスターを作るというアナログな情報発信活動を行って成果を出していた。この発表の中では、同時に沖縄独特の文化や食品などを紹介している。その具体例として、固める途中の状態で豆腐として味わう「ゆし豆腐」や、語り合う・お喋りといった意味をもつ「ゆんたく」といった言葉を知った。
  沖縄では現在、急速に人々の繋がりが崩壊している傾向にあり、疎遠社会が深刻化し始めているという事実も知った。また、ファーストフード等の普及により、人々の寿命にもよくない変化がみられるようだ。ドラマをはじめとしたテレビ番組で描かれるような沖縄のイメージは、現状とは大きくかけ離れたものになってきつつあった。沖縄大学生の発表では、「取材は究極の散歩である」という言葉が大変印象に残った。緒方先生自身も、「取材は最高の観光である」と主張している。普段、机とパソコンにばかりむかって研究している私達だが、現場に足を運ぶことも重要であると痛切に感じた。
  18時30分からは、沖縄大学側の学生幹事さんに案内され、那覇市内の飲食店「和気あいあい」で懇親会を行った。ここでも沖縄大学の学生・先生方から多くの意見を聞くことができ、学生にとってきわめて有意義な交流となった。
3日目(21日、金)
  8時30分にホテルをチェックアウトし、伝統工芸などを実践的に体験するグループと、斎場御嶽など沖縄県民の信仰の地を巡るグループに分かれ、行動した。斎場御嶽はマスコミにも取り上げられ、全国的にも有名なパワースポットとして知られている。しかし一方で、以前から地元の人々の信仰の地でもあったため、観光客と地元民との間で温度差が生まれている。シーサーの絵付け体験では、制作したのが一匹だけであったので、元来シーサーは雌雄一対で「一組」となるものだから、いくらか違和感があったが楽しめた。観光的要素と、土着の文化といったものの間に生じる意識や認識の差をここでも学んだ。
  その後は昼食と美ら海水族館の見学、19時30分から名護市内のレストランで夕食をとり、ホテルゆがふいんおきなわ(名護市宮里453-1)にチェックインした。
4日目(22日、土)
  8時30分にホテルをチェックアウトし、道の駅かでな(嘉手納町字屋良1026-3)から基地を見学、その巨大さと基地内の優雅なたたずまいに対し、付近住民居住の狭い町並みとの対比に驚かされた。その後レンタカーを返し、那覇空港に移動し、沖縄大学生真喜志さやかさんの見送りを受け、 14時25分発の飛行機に搭乗。16時20分に伊丹空港に到着し、解散。

以下、スケジュールまとめと関連写真を添付する。

2012年度同志社大学渡辺武達ゼミ沖縄訪問スケジュール
日程:2012年9月19日~22日

1日目
(9月19日)
09:40 伊丹空港集合 1Fターミナル団体受付
10:25 伊丹空港出発 <ANA105便>
13:20 那覇空港到着
→レンタカーを借りて、ひめゆり平和祈念資料館、琉球ガラス村を見学。
18:30 めしCafé とらえもん で夕食。
ホテルにチェックイン
【授業の関係で遅れて到着した組(董さん・福田さん・山本さん)】
19:35 関西空港出発<ANA1739便>
21:35 那覇空港到着
→レンタカーでこの3人を迎えにいき、合流後、入浴・研究発表の準備・就寝
2日目
(9月20日)
朝食後、首里城、旧海軍司令部壕見学。
12:00 美ら花 人人(じんじん) で昼食
13:30 琉球新報社訪問、新聞博物館・編集局を参観
15:30 沖縄大学との交流・研究発表・懇親会
1日目と同じホテルに宿泊。入浴後、就寝。
3日目
(9月21日)
ホテルをチェックアウト後、行き先ごとに分かれて沖縄県内を参観。
19:30 農場レストランHAN'S 名護店で夕食。
ホテルゆがふいんおきなわ・あがり館にチェックイン
4日目
(9月22日)
8:30 ホテルにて朝食。
9 : 00 各自荷物をまとめ出発。
道の駅かでなから米軍嘉手納を見学。
14:25 那覇空港出発<ANA106便>
16:20 伊丹空港到着

解散

2日目午後、琉球新報新聞博物館にて

2日目午後、琉球新報新聞博物館にて

沖縄大学生との研究交流風景

沖縄大学生との研究交流風景


嘉手納基地を背景に

嘉手納基地を背景に

 

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