MH著
この論文は、現在私がオペレーターとしてアルバイトをしている通信販売会社の体験談をもとにクレーマーの位置づけと増加の背景について書いたものである。クレーマーの中には企業に改善点などの具体的な提案をしてくれる良いクレーマーと、企業にとって何のメリットもない悪いクレーマーの二種類に分けられることを踏まえた上で、まず第一章ではクレーマーがなぜ問題なのかを述べた。続いて第二章では、クレーマーの存在が注目され始める前の、過去のクレーム内容に焦点を当てた。第三章ではクレーマーの定義づけを行い、第四章ではクレーマー増加の原因を考察した。第五章では事例研究として、私のアルバイト先であるA社にかかってくるクレームの電話をタイプ別に考察した。第六章の考察では、企業側と顧客側から見た悪いクレーマーの数を減らす具体的な方法について述べた。
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MH 論文への 批評
筆者自身の体験を基に書かれているので、具体的なクレーマーを連想することが出来てよかった。ただ、クレーマーを大きく「良いクレーマー」と「悪いクレーマー」と二分しているのであれば、その二者の違いを具体的に列挙し、比較検討してみたり、どのような点が二者の分かれ目なのかを、環境や状況等から検証するなど、もう少し掘り下げることも出来たのではないかと思う。また、モンスターペアレントとクレーマーは「顔が見えない」という点などで A社などのような会社に対するクレーマーとは異なる部分があるので、モンスターペアレントについての考察が独立して設けてあればもっとよかったような気がする。まとめの部分では、改善策について、あるいはクレーマー問題に対する筆者自身の考え、意見をもう少し聞きたかったという印象を受けた。(NT)
言葉遣いが巧みで、クレーマーの心情と企業側、クレーム処理側の心情がわかりやすく、おもしろかった。クレーマーの歴史、クレーマーの分類を述べることで、なぜクレーマーが増加しているかを説明しているのはよかったし、主張も納得のいくものだった。様々な事例が挙げられていたことは、クレーマーの実態をよく知らない私にとっても具体的でわかりやすかった。ただ、事例研究がなぜクレーマーが増加しているのかを明確にするものではなく、良いクレーマーと悪いクレーマーの紹介のみになっていたのが残念であった。クレーマーが増加する理由と結び付けて考察が付け加えられていれば、なおよかったのではないかと思う。
最後に、クレーマーに狙われないため、クレーマーにならないための筆者なりの改善策が挙げられていたことを評価する。(TY)
当初「モンスター・ペアレント」研究から始まって、でも今ひとつ議論が深まらないなあと相談していたのですが、灯台もと暗しで、アルバイト先のクレーマーを素材にしたら、現代的で、生き生きとした論文になりました。理不尽な言説にMHさんは関心があるんですね。(UK)